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「ライト照らせよ。暗いだろ?」 「……あぁ、悪い。さっき充電が切れた」 「マジかよ……」 「一つあれば十分だろ。ほら、行こうぜ」  ワタルが足を踏み出した。あっという間に彼と距離が開いた。仄暗い空間に自分が溶けていきそうな心地に包まれる。  ガサ。遠くから音がした。何かが向かってくる? また、イタチか? びっくりするのはもう勘弁だ。 「っ……待てよ」  俺も慌てて後を追いかけた。  伸びっぱなしの雑草を掻き分けながら、建物に沿って歩く。正面玄関はもちろん、一階の窓すべてに板を打ち付けてある。裏口も同じだった。入れそうなところがないか注意深く探したけれど、そんな箇所はなかった。  しばらく散策したのち、前を行くワタルへ声をかける。 「ワタル。入るのやっぱ無理じゃねぇ?」 「待てよ。もう少し探してみようぜ」 「でも、随分探したぜ。入れそうなところなんてなかっただろ」 「もう少しだって」 「なにがもう少しなんだよ。どうせ見つかんねぇって」  俺は諦めていた。と言うよりは早く帰りたかった。 「焦んなよ。まだ時間あるだろ?」  それでも、ワタルはズンズンと進んで行く。 「待てって」  置いていかれないように必死でついていった。     
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