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彼のほうへライトを照らした。
植木が生い茂る建物のそばに立つワタル。光を浴びて、彼の顔がゆっくりとこちらへ向いた。その口元には笑みが浮かんでいる。
「入り口」
不意に漏らしたその言葉にどきっとした。
「え?」
「……あるぜ。入れそうなところ、ほら見てみろよ」
ワタルがじわりと腕を上げ、壁のほうへ指をさす。
どうやら植木の奥にそれがあるらしい。だが、ここからではよく見えない。
「冗談だろ?」
笑って言おうとした。けれど、引きつってうまく笑えなかった。
「いいから」
ワタルが嬉しそうな口調で言う。
恐る恐る近づいていき、密集する植木の奥を覗き込むようにして見た。ライトを照らす。死角になっている箇所。
首筋に冷たいものが触れたんじゃないかと錯覚するほど、ゾッとした。
「……嘘だろ」
そこには本当に窓があった。空気の流れを良くするための構造なのか腰の位置にある窓。板は打ち付けていない。窓は小さいがギリギリ入れそうだ。
「な、あったろ?」
「あ、あぁ」
信じられない。さらに驚いたのはそれをワタルが見つけたということだ。
植木が密集しており、かなり気をつけて見ないと見逃しそうな箇所にある。しかも、ワタルはライトを持っていない。
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