マドンナだと思ってた

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中野雅(みやび)は、24歳の誕生日を迎えようとしていた。 ある先輩が言っていた言葉を思い出す。 「雅ちゃんは、クリスマスケーキにはならないよね。」 「は?どういう意味ですか?」 「クリスマスケーキみたいに、25まで売れ残ってるなんてこと無いよねってこと。」 「ああ、そういう意味ですか。」 雅にとって、その人は、ただの先輩。カメラマンだった。 雅は、高校の頃を思い出す。 あの頃、自分はクラスのマドンナとして扱われていた。 普通のレベルの普通の高校。 雅は、勉強も出来て、そして美しかった。 肌などは、白く透き通るくらいで、ニキビもシミも縁が無かった。 親友の朝倉葉月は、同じくらい肌が白く、男子にも人気があった。 それでも、誰とも付き合わず、雅の側にずっと居た。 葉月は、雅のことが好きだった。 同性である雅のことが・・・ だから、24歳になった今でも、雅の傍にずっと居る。 同じモデルとして、業界にその存在をアピールしていた。 でも雅は・・・ 24歳を過ぎ・・・自分の限界を感じていた。 もう自分は、あの頃のマドンナなんかじゃ無い。いい加減、現実を見なければ・・・ それでも自分はこの業界を、去る事なんか出来ない。 だって・・・親に反対されて入ったこの業界。そんな簡単に諦めきれない。 あるカメラマンが居た。 山岸保。24歳。雅と同い年。 彼は、雅と同じクラスに居た。 雅の記憶は過去に遡る。 高校での、あの頃の記憶に・・・ 山岸は言った。 「写真、撮らせて。」 一眼レフを手にした山岸に、雅は応じた。 教室のベランダに、導かれる。 しかし、雅は、それを拒んだ。 「やっぱり、ごめんなさい。」 山岸を置いて、雅は教室に舞い戻った。 山岸は、そこに置いてきぼりをされた。折角、写真を撮ろうとしたのに・・・僕の好きな人・・・可愛い人・・・ 雅は、卒業の時を迎えるまで、そのことを知らなかった。
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