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雅の寄せ書きの中に、こんなことが書いてあった。
それは、クラスの不良グループの頭格の一人の寄せ書きだった。
あんたはキレイだ。もっと仲良くしておくんだった。俺だけじゃ無く、俺の仲間もそう思って居たみたいだ。お元気で。
意外だった。
雅は、彼らとは無縁だったし、話したことも、ほぼ無かった。
ただ、ある日、一人で席に座っていた時、彼のグループの一人が、雅をからかってきたことがあった。
「ねぇ、なんでそんな、澄ましてんの。」
「え?澄ましてなんか無いよ。」
「うっそだぁ。頭いいもんね、俺らとは別だよね。」
「ホント、普通だよ?別なんかじゃ無いよ?」
「ふうん?・・・」
そう言っても、彼はからかう顔を崩さず、雅の元を離れた。
雅は、彼らとはほとんど交流が無かったし、更には、男子とは話をしたことも疎らだった。
修学旅行では、雅のことを好きと言っている男子と同じグループになった。
雅は、意識した。好きでも何でも無いその男子のこと。
顔は悪く無い。性格も、悪く無い。
でも雅は、自分のことで精一杯で、その男子と付き合うとか、そういったことは無かった。
修学旅行先で、むしろ意識して、逆に話そうとすると、ぎくしゃくした。
その男子は、雅のことを諦めたようだった。
そんな風だったから、高校からモデル事務所で働き出した雅は、恋愛経験が足りなかった。
自分から好きになったのは、中学の最後の頃、隣の席になった男子で、白木くんと言った。
顔が、好みだった。
彼の家の近くまで行き、告白しようと思った。
でも結局、振られるのが怖くて、告白も何も出来なかった。
好きになったのは、その子だけ。
他には、小学校の頃、淡い恋心を抱いた事もあったけど、相手も同じ気持ちだと確信していたけど、両想いになることは無かった。
「撮るよ?雅?何ボーッとしてんの?」
ハッと、現在に記憶が舞い戻る。
山岸が、雅を呼んでいた。これから雑誌の撮影だ。
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