あくび。

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今日ね。あなたに似てる人を見かけたんだ。 その人は図書館の机で眠ってた。 たくさんの本を広げて、綺麗な字が書かれてるであろうノートの上で。 髪型も、服装も、寝顔までもがあなたにそっくりだった。 私は少し離れた席であなたをみてた。 あの日、触れられなかったあなたの背中を 今日僕は見てた。 僕もノートを開き本を読み始めた。 なぜだろうな。 全然内容が入ってこないや。 隣で君が寝てるからかな。 目の前の文字がぼやけて何も見えないや。 隣で眠ってた君が起きた。 大きなあくびと伸びをして。 その仕草も全てが似ていた。 まるであなたは、あなたみたいだった でも、似てただけだった。 僕の気持ちだけが君を見つめてる。 もう君はいない。僕の知る君はいない。 僕が会いたい君はいない。 ただ僕は理想を見つめているだけ。 それとも夢なのかもしれない。 僕は静かに本を閉じ、背中を向けた。 全ての幻想に背中を向けて でも現実にも目を向けられなくて。 足早に去る事しか出来なかった。 冬風が顔を撫でる 僕は涙で濡れた瞳を あなたからうつされた あくびのせいにした。
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