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「マオを、返せぇぇ!」
身体が震える。怒りに満ちた声が響き渡った。奮い立つと共に、ルルクは黒い何かに殺気を向ける。
黒い何かはそんなルルクに、とても恐ろしい笑みを浮かべた。
「ガハハ、次はデザートってか?」
わかっている。ルルクでは勝てないことぐらい。
相手もそのことがわかっている。それでもルルクは、許すことができなかった。
「返せ。マオを返せよぉぉ!」
「そいつは無理な相談だ。もう食っちまったよ!」
ルルクは叫ぶ。例え敵わないとわかっていても、黙ってなんていられなかった。
怒りのままページをめくり、魔法を発動させようとする。だが、そんなルルクを嘲笑うかのように悪魔の王は身体を払い飛ばした。
転がっていく本。ルルクが弱々しく起き上がろうとしたその瞬間、悪魔の王は勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
「安心しな。俺の腹の中で、一緒になれるからよー!」
悪魔の王が大きな口を開いた瞬間、ルルクは目を閉じた。
だが、最後の瞬間はいつまでも訪れない。不思議に思い、ゆっくりと目を開く。すると黒い何かは苦しげな顔をしてお腹を抑えていた。
「ググ、なんだこれっ?」
そのお腹から徐々に光が溢れていく。何が起きたかわからず、ルルクは呆けたように見つめていた。
どんどんと大きくなる輝き。それはお腹から身体全体へと広がっていく。共に悪魔の王は苦しげに呻き、叫び、悲鳴を上げた。
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