プロローグ

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『もうやめて!』  少女がとても悲しそうな顔をして叫んだ。  どうしてそんな顔をしたのか。今になってもその理由はわからなかった。 『チクショウ、覚えてやがれ!』  しかしそんなことよりも、それは怒りに満ちていた。  銀色のロザリオに飲み込まれていく身体。懸命に暴れ、逃れようと足掻いていた。  だが、どんなに暴れてもロザリオから逃げることはできなかった。  ギラつく目で、それは少女を睨みつける。少女はというと、その姿から目を逸らしていた。  ふと、少女の腕が重たくなる。視線を落とすと、少女の腕をガッチリと掴んでいる真っ黒な手があった。 『俺は、絶対に忘れねぇからな!』  今にも吸い込まれそうな身体。そのはずなのに、それは迫るように少女へ叫んだ。  少女は思いもしないことに、思わず目を大きくして息を止めてしまった。 『例え身体が滅びようと、魂が喰われようと、俺は必ず復活する。絶対にてめぇを見つけ出して、その全てをグッチャグチャにして食い殺してやる!』  それは何も知らない者が聞けば、単なる恨み節。だが少女はその言葉を聞いて、嬉しそうに微笑んだ。 『いいよ』  それは意外な答えだった。だからなのか、それは思わず目を見開いてしまう。 『その時は、本当の〈友達〉になろうね』  愛しげに、ただ優しく。  その真っ黒な額に、口づけをした。  一体どういう意味があるのか。それを考えようとした瞬間、ロザリオが強く輝いた。 『ガァアァアアアァァアアァァァァッッッ』  こんな所で終わる訳にはいかない。  こんな形で終わってはダメだ。  しかし、どんなに足掻いても望む結末には辿り着かない。  伝えなければ。そうしなければ、一生後悔する。だからこそそれは叫ぶ。
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