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清々しく広がる空。綿あめのような雲が穏やかに漂う中、一つの建物があった。
白を基調にした柱に、アーチ状の屋根。出入り口には人の姿をした二体の石像がある。不思議なことにその背中には、一対の翼があった。
神に仕え、天からやってきた使者。いわゆる天使をモチーフにした石像だ。しかし、あまりにも古いのか翼はボロボロで所々欠け落ちていた。
身体にも亀裂が走っており、いつ粉々に壊れてもおかしくない。そんな天使の石像が向かい合って立っているかつて修道院だった建物では、楽しげな声が響いていた。
「マ、マオ、ミーシャ。ヤバいって、帰ろうよ」
「何言ってるの、ルルク? 男の子のあなたが一番怖がってどうするのよ」
「マオお姉ちゃんの言う通り! せっかくの冒険なんだから楽しまなきゃ」
薄暗い建物の中、先頭に立つ少女マオは元気よくポニーテールにした黒髪を揺らしていた。太ももを包み込むほど長いオレンジ色のフード付きシャツに、ふくらはぎを包み込む青いズボンがどこか女の子らしさを出していた。
その後ろを歩く赤髪の少女ミーシャは、ピョンと立つ猫耳があった。白いシャツと淡い色合いの赤いベストに首から下げられた星型のペンダント、白いショートパンツといった服装が活発な印象を与える。だがそれよりも印象的なのがお尻にある長い尾だった。
最後尾を歩く少年ルルクの髪は雪のように白い。身体を隠すように羽織った白いローブに、視力を矯正する丸メガネ。抱えるように持っている厚い本が、どこか学者のような印象を与える。しかしその身体はとてもわかりやすく震えており、表情もとても頼りなかった。
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