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雅は、飲みかけのホットチョコレートを一気に飲み干した。ホットチョコレートは、休憩の初めに作っておいたから、それほど熱くはなかった。けれど、慌てて飲んだものだから、口の周りにはチョコレートの泡がついてた。
「あ、わかった。ゆっくりでいいよ。」
春子は、雅の顔を見て思わず笑った。
「何がおかしいんですか?春子主任」
「だって、唇にチョコついてるよ」
春子は、雅の上唇のチョコレートを、春子の人差し指でぬぐい取った。
「じゃ、先に出てるね」
春子は、できるだけ、トーンを低く落ち着き払った雰囲気で答え、休憩室のドアを閉めた。背中越しに、ワイドショーが再開していることは、無視することにした。
病棟の奥、非常口の手前に物品倉庫がある。
春子は、倉庫入口のカーテンを閉めて、検査準備ノートのチェックリストを見ながら、ワゴンに検査物品を手際よく並べていた。
突然、倉庫の入口にあるカーテンが勢いよく開いた。
「主任、遅くなりました」
透き通った声の主は、雅だった。~やっぱり、透き通ったキレイな声だ。
「春子さん、さっきドキドキしてましたよね?」
「ば、バカ言わないでよね。それに、病院では、さん、じゃなくて、主任でしょ。仕事中よ。」
「つまんなーい」
春子の唇に、柔らかい雅の唇が当たった。
「チョコレートの味、します?」
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