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5月
病棟のナース休憩室は、案外広い。
四畳半くらいのスペースのほかに台所と冷凍庫がある。ソファーベッドと夜勤の仮眠用に毛布と枕も準備されている。結構、快適な一人暮らしができるんじゃないかと思っている。
去年まではテレビもあったんだけど、夜勤の巡回を忘れて、ドラマの最終回に涙していた熟年ナースさんが、次の日に、熱く最終回を語ったもんだから、背後に立っていた看護局長の逆鱗に触れた。おかげで、院内の休憩室から、テレビが消えた。
「4階の川北さんって、整形外科の進藤先生と同棲してるって知ってる?」
「ほんと?川北さんって、外科の野村先生じゃないの?」
「まさか。野村先生は、ゲイって聞いたわよ。」
昼休みの女子休憩室は、いつも噂話で花が咲く。テレビのワイドショーよりも実に興味深い。
彼女たちにとっては、それが真実かどうかは、問題ではない。いつも、盛りのついたネタをスパイスにランチを楽しんでいる。~それが自分のことじゃないからだ。
「先輩たち、そういうのって、どうかと思いますよ。川北さんも先生も独身なんだからいいんじゃないですか。それに、ゲイ差別は、今時古いですよ。」
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