生者を犠牲に死者を甦らせるおぞましき風習

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あと「還り御前」は、この儀式によって必ず子を身ごもる。 そして出産をむかえ赤子が産まれた同時に、身代わりとして亡くなるのだ。 その埋葬にも「掟」があるが、ここには書かない。 産まれた子は、生前と同じ記憶・喋り方やしぐさ・癖などそのまま見せるようになる ため、死 者がよみがえったことは、疑いようのないとのことであった。 私は聞いた。 「その風習を実行することは、あなた達のなかでは許されると思ってる?」 wはその答えであろう話をする。 「還り御前 で産まれた子は、どうも神仏に嫌われているみたいなんだよね」 その子が神社など神域に入ろうとすると、何かしらの障害が起こり断念せざるを 得なくなる。なのでお宮参りなど参拝ができないそうだ。 それは、神仏の加護が得られないということを表している。 「まあ当然だね…こちらの勝手な理由で、ひとつの人生と命を犠牲にするのだから」 「俺やその子、儀式に関わる人…この先やすらぎは得られないだろうね。  それがわかっていても…もう一度会いたいと…すがってしまう地獄もある」 休憩時間の終わりが近いため、wの話はこれで終わった。 それから間もなくwは会社を辞め私もほどなく退職したので、wがどうしているかは 知らない。 ただ、未だに考えさせられている。 「天に背いてまで叶えた願望は、何をもたらしてくれるのか」 ということを。  
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