生者を犠牲に死者を甦らせるおぞましき風習

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以前、勤めていた会社での話。 同僚のwを、周囲は不思議に思っていた。 なぜならwは新婚でありながら、とにかく妻の話を嫌がる。 普段は明るく、ノリのよい男だ。 「ノロケ話ひとつぐらいありそうなのに」というのが、皆の意見であった。 このwと私は同期であり席も隣とあって、わりと話をする。 よって、ある昼休みにその疑問を伝えてみた。 「ちょっと場所を変えようか」 wに促された行き先は、物置きとなっている人気がない部屋であった。 そこでwは、重たそうに口を開いた。 「今の 妻はすぐ消える存在だ。だからなるべく人の記憶に残したくない…」 どういう意味かと、wに尋ねる。 「…真咲(私)さん、民俗風習マニアって言ってたよね。だから話してもいいと思う。  俺の出身は、東北地方の○○ってとこで、 田畑しか ない辺鄙な集落だ」 「だけどその集落にはさ、よそに知られてはまずい風習があってね。  隠し風習って知ってる?」 私は頷く。 「世間の道理・自然の理に背くことから、絶対に外に出てはならない風習ですよね。  裏風習もしくは闇風習・口無し風習とも呼ばれます」  
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