3人が本棚に入れています
本棚に追加
楽屋
楽屋に入ると、アランが言った。
「終わったー。おれ、マジ、ヤバイ。」
そう言っていきなり倒れた。ケイトは動ずることなく、彼の唇に水を浸し、少しづつのませた。
アレックスが失神しているアランをチェックし、ケイトからボトルを受け取り、アランの顔に水を少しづつ垂らして、呪文のように繰り返し言った。
「戻れ、アラン。」
アランはすぐに息を吹き返した。
「またか、、僕って。、、、やめてよ、これ、水?」
ケイトがタオルを渡した。
アレックスが言った。
「意外と原始的方法がきいたね。また経験値が増えた。みんな覚えといてね。」
アランは壁にもたれて、水を飲み、肩で息をしていた。
「もう、こういうのは僕はやりたくない。」
ポールは彼を抱え起こし、みな無言で、粛々とテレビ局の地下駐車場にとめてあるバンに向かった。
車に乗るとポールは言った。
「わかった、カイルに言っとく。2度とやらせない。悪かった、僕が止められなくて。」
カイルからポールに携帯が掛かってきた。
「ポール? やったね。ライブ見た。よかったじゃない。行けなくてごめん。それでアランは大丈夫?」
「カイル、まあインタビューは普通にうまくいったけど。もうやらない。アランが拒絶反応だ。」
「倒れた?」
「うん、今は戻ったけど。」
カイルは電話の向こうで瞬く無言だった。
ポールが言った。
「カイル、もうやらないよ。彼は嫌なことやると、こんな風になるのがわかった。」
カイルがおもむろに言った。
「悪かった。僕も懸念していたんだけど、、、ボスがね、副社長のイアンがね、アランにこの壁を乗り越えさせろというから。そうか、今度は僕が盾になる。」
「頼むよ。」
「アラン、今話せる?」
ポールは携帯をアランに渡した。
「よう、カイル。」
「悪かった。謝る。もうさせない。僕の責任だ。」
「僕は、インタビューはうまくやったよ。内容はともかく。終わった後、リアクションが来て。もうこんなのやりたくない。」
「そうだね。アラン、、、いい知らせを教えようか?凄い視聴率だ。そしてSNSで沸騰中。たぶん明日Youtubeでもそうなるだろう。君は犠牲になったけど、プロモは大成功だ。」
最初のコメントを投稿しよう!