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アランのバンド「イルミナ」のBBCのTVショーインタビューの話が決まった。
今、これだけ話題になり、人気も出ていても、イルミナはテレビインタビューは初めてだった。それはメンバーの誰もが望まなかったから。取材も極力避けてきていた。それゆえイルミナは謎に満ちていた。
プロダクションから、これだけは受けてくれという指示が出て、拒めなかった。コーディネータはプロダクションのプロデューサーのカイルとベーシストのポールが担当した。
リーダーでヴォーカルのアランは憂鬱になっていた。
「僕、やだな。僕たち音楽勝負なんだから。顔見せて、アップ撮られて、予想もしない馬鹿な質問に答えるのなんか、まったく拷問だよ。」
ポールが言った。
「来月のヨーロッパツアーのプロモのために必然だとカイルが言っていた。たまにはやりたくないことに手を染めなくてはいけないことがあるって。アランがやりたくないのは凄くわかるが、たった15分だから、なんとか我慢してくれないか?」
最後まで嫌がるアランをポールがなだめる。
「僕だって、出来ればやりたくない。でもヨーロッパツアーのために布石を打っておくのも一策だ。何もしないでコケると、後悔しそうだ。」
「イルミナはコケない。絶対成功する。」
アランは不満そうに言い張った。
ポールは言った。
「メイクアーティスト使うとべたべた塗るから、秘書のケイトにやらせよう。そして服はデービッドに任せていい?」
アランは言った。
「僕は嫌だけど、有能なスタッフは揃ってるね。時間15分だっけ?」
「なんかあっちでビデオ編集入れるそうだから、実質、インタビューは15分くらいということだよ。」
「分かった。やるよ。気が進まないけど。」
.........
当日、ケイトはアランの顔をメイクしていた。
「ケイト、あまり塗らないで。嫌いだから。」
「アランはそのままできれいだけど、顔、割れたくないんでしょ?アイライン入れようよ。上と下に。」
「えっ、ジョニデみたいに?やだよ。」
「印象変わるよ。ばれないよ、きっと。」
「わかった。薄く頼むね。」
「アイラインは謎っぽく少し、ぼかそうかな。
あとリップグロス。そしてキラキラパウダー。ほら、きれいになった。」
アランは鏡をのぞいて、呆れた顔をした。
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