二十年後――月(わたし)と太陽(カノジョ)

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 私はいつものようにスマホで酔芙蓉の花の写真を撮り、ミレイのインスタにアップする。花は白金のマンションで咲いている設定になっていた。コメントは「清々しい朝です。でも、私のもう一つの心はあなたを想ってすでに紅色です」とつけた。柊平が読んでくれたら嬉しいと思う。ミレイが内緒でインスタを修正したり、ツイッターをしている記憶は、どこかに吹っ飛んでいた。  夫を送り出した後、早速、計画を立てる。私の、私による、私のための殺人計画だ。しかし、ミレイの教室は午後からだから、集中して行わなければいけない。集中力を高める効能がある「ユーカリ」のエッセンシャルオイルをアロマポットに垂らす。クールな匂いが部屋に澄み渡る中、考えを巡らした。  夫に殺され、彼の腕の中で死んでいく。私にとっては幸福なことだけれど、夫からしたら殺人で逮捕されたら溜まったものじゃない。完全犯罪の必要がある。しかし、彼は優しい人だ。そもそも、妻を殺すことを承諾するだろうか。私が心から訴えればきっと……。いや、彼の優しさに訴えるのではなく、彼の裏にある狡猾さをくすぐる方法で提案したらどうだろう。
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