33人が本棚に入れています
本棚に追加
休みが明けて、バレエのレッスンを前に、リイナの髪をお団子に纏めていると、
「ヨシコ、最近、いいことあった?」
私の変化など誰も気づかなかったけれど、リイナは鋭かった。彼女の指摘通り、私は毎日が楽しかった。死の準備という、到底、普通では考えられない現実に血湧き、肉踊る。生きているって実感がした。だから、スーパーで親子連れに出くわしても気にならないし、「死にたい奥様」のスレッドも最早、必要としていなかった。
「いいなぁ、ヨシコは。リイナは全然、楽しくない……」
私が休んだ間、幼稚園のお迎えが遅れたり、夕飯が一人ぼっちだった日が続いたようだ。でも、先週のミレイは教室の仕事しかなかったけれど……。
「ごめんね。寂しい想いをさせて」
私はリイナを抱き寄せた。ところが、彼女は「許さない」の一点張り。以前、行きたがっていた水族館に今度、連れていくことで決着を試みるけれど、「今度っていつ? 何月何日の何時?」と、しつこく聞いてくる。大人の「今度ね」を信じられないのは子供らしい反応だと思う一方で、逆に、普段は大人びたリイナらしからぬ反応だと、違和感を覚える。
最初のコメントを投稿しよう!