32人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「ヨシコ、この写真ボケてる。インスタ映えしないじゃない」
知り合って二十年経っても、彼女は私のことを昭和な名前で呼んでいた。
「ほらボケってしないで、たかがインスタって思ってるでしょう。たった一枚の写真が命取りなんだから」
「命取りって、大袈裟だなぁ」
「全然、大袈裟じゃない。SNSで持ち上げられれば持ち上げられるほど、些細なことで揚げ足を取られて一転、非難のコメントが殺到するんだから。てか、アナログのアタシが何言ってんだって、バカにしてるでしょう」
「バカになんてする訳ないでしょう。あなたは私の親友なんだから」
「親友じゃ――」
話半ば、向こうのテーブルから、生徒さんが「ミレイ先生!」と彼女を呼ぶ。ここは白金のタワーマンション最上階にある彼女の自宅サロン。ミレイは週3回、アロマキャンドルとプリザーブドフラワー教室を開いていた。
最初のコメントを投稿しよう!