二十年後――月(わたし)と太陽(カノジョ)

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「ヨシコ、この写真ボケてる。インスタ映えしないじゃない」  知り合って二十年経っても、彼女は私のことを昭和な名前で呼んでいた。 「ほらボケってしないで、たかがインスタって思ってるでしょう。たった一枚の写真が命取りなんだから」 「命取りって、大袈裟だなぁ」 「全然、大袈裟じゃない。SNSで持ち上げられれば持ち上げられるほど、些細なことで揚げ足を取られて一転、非難のコメントが殺到するんだから。てか、アナログのアタシが何言ってんだって、バカにしてるでしょう」 「バカになんてする訳ないでしょう。あなたは私の親友なんだから」 「親友じゃ――」  話半ば、向こうのテーブルから、生徒さんが「ミレイ先生!」と彼女を呼ぶ。ここは白金のタワーマンション最上階にある彼女の自宅サロン。ミレイは週3回、アロマキャンドルとプリザーブドフラワー教室を開いていた。
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