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離さない、永遠に
心地よい風が、私を包み込む。
深呼吸をすると、妙に落ち着いた。
グラウンドを見下ろすと、部活動に励んでいる生徒達がいる。
あなたが生徒からのいじめに悩まされているのに私は、手を差しだす事が出来なかった。
あなたは、そんな私に「心配しなくていいよ」って言ってくれたけど、私は出来なかった。
怖かったからーーー
あなたと同じ境遇になることが
怖かったからーーー
私は、見て見ぬふりをしてしまった。
学校では、あなたと話す事が出来ない環境だったから。
それでも学校が終わると、2人だけで会ったあの時間は楽しかった。あなたと話した、他愛もない事が今では懐かしい。
そんな秘密の関係が続いてきた頃よね、あなたが私に好意を伝えてくれたのは。
でも、私はあなたの気持ちに応えてあげられなかった。
学校に知られたら、どんな汚い言葉が私を攻め、どんな環境が私を待っているか。
それからよね、あなたが自ら命を絶ったのは。
私があの時、あなたの手を握って気持ちに応えてあげたら、あなたは命を絶たなかったの?
私があなたの気持ちを離さなかったら、あなたはどうしたの?
その罰なのかしらね。
どこから話が漏れたのかしら?でも大体の検討はついてる。
うちのクラスよ、きっと。
私達の関係を漏らしたのは。
今では私がクラスの標的よ。
人間って、醜いわね。
あなたが、こんなつらい日々を過ごしながら、私に「心配しなくていいよ」って言ってくれたのに。
でも、ごめんなさい。
私があの時、あなたの身代わりにって一瞬よぎったけど、こんな状況が続くのなら、あなたの身代わりになんてとてもなれなかったわ。
「おい、あそこ。鈴木先生じゃないか」
グラウンドの生徒が私に気づいたようね。
あなたと同学年の生徒かしら。
屋上を指差して、私の名前を叫んでいるわ。
この場所は、あなたが命を絶ち、この世界から旅立った場所
私にとってこの場所は、あなたに会いに行く入口の場所
誰にも邪魔はさせない。
あなたに伝えられなかった、この想い。
この想いを持って、これからあなたに会いに行くわ。
今度はきっと、あなたの手を握ってみせる。
もう、あなたから離れないーーー
もう、あなたを離さないーーー
私はそっと、足を踏み出した・・
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