ある冬の日の事

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無機質なコンクリートばかりの風景ですら、太陽の陽を暖かく反射して、輝いている。冬の青空はどこまでも広い。透き通った空気に、白い息がとけて消えていく。 門を出て、いつもの公園へ走って向かった。乾いた風が頬を撫でる。木々が揺れて、枯葉が舞う。 よくある冬の景色は、どこまでも澄んでいて美しかった。 男はベッドの上で目を覚ました。 三時間ほど寝ていたらしい。すっかり日は落ちて夜になっていた。気がつくと一気に腹が減ってくる。そういえば昼から何も食べていない。男は如何にも一人暮らしというような小さな冷蔵庫を開けると、一つため息をついた。  玄関に掛けてある黒い外套を羽織って外に出る。突き刺すような冷たい風が頬に当たる。白い息がすぐに闇に溶けて消えていく。煙草を一本咥えて火をつけると、近くのコンビニに向かった。 しばらく歩いて歩道橋に差し掛かる。階段を昇ったところで女の事を思い出した。男は苦い顔をして、橋の真ん中にいる女を見た。 先と変わらず歩道橋の外を眺めながら何かをつぶやいている。気にせずに通り過ぎれば良いだろうと思い、足を進める。しかし男はこの女に見入ってしまった。 ぼうっと青白く浮かび上がる女の身体。空色のワンピースから伸びる陶器の様に艶やかな四肢。目の前に在る異常な光景が酷く恐ろしく……美しい。 ジジジッと煙草の灰が落ちる。     
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