砂浜

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 翌日、先輩たちがそろったのを見計らってプレゼンをした。実際は企画案をわいわい話しただけなのだが、紫音が「こういうのってプレゼンって言うんだよね。なんだかわくわくどきどきしちゃうね」なんて言い出したのでこういう状況になった。  結果を言うと、満場一致で案は可決された。ただ、予想していた通り先輩たちは受験や就職を控えているため、準備も参加も難しいようで、2年生が主体となって行うことになった。顧問の先生からも、自主的な活動として安全に注意してやる分には構わない、しっかり勧誘しなさいとのお言葉を頂戴することができた。 「そうと決まれば、明日配るビラを作らなきゃ。瑠璃、絵描けるよね?」 「瑠璃ちゃんの絵、好きー」  2人に囲まれてしまったので、描くしかない。橙子はレイアウトで紫音は写真、翠は撮影ルート、そして私が絵を。アナログとデジタルを使い分ける橙子の監督の下で作業はどんどん進んでゆく。めずらしく翠が楽しそうに鼻歌を歌っている。 「翠、なんだか楽しそうだね」 「文学散歩…1回やってみたかったから。海、楽しみだね」  そう、今回の行き先は海がメイン。この街をモデルにした小説『砂浜のアンドロメダ』は、海沿いの駅から海までをつなぐルートで物語が進んでいくのだ。いくつか他にも選択肢はあったのだが、この小説は恋愛モノで2年ほど前に人気俳優が主演で映画化されて話題になったのが記憶に新しいし、この街の若い子にとって知名度は抜群。文学散歩だけど堅苦しくない、さらに海沿いには撮影地もたくさんある。それを理由に決めたのだった。活動名は翠が推す文学散歩ではなく、簡単に『撮影体験』となったけれども。
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