宝石

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 最近では、この店の客層からすればめずらしい高校生の女の子がよく来てくれる。私のことをシュガーさんと呼んで、学校であった出来事をあれこれ楽しそうに話してくれるのだ。最近は、新年度が始まって忙しいのかしばらく来ていない。そういえば、もう少しすると部活の勧誘がどうとかこの前言っていた気がする、なんて考えながら看板を裏返してcloseにする。海のふちに、かすかに残っている太陽が沈もうとしていた。  中に入りカーテンを閉めようとすると、足元から音が聞こえる。 「あら、ニュクス。だめよ、夜が来てしまうから」  ニュクスと呼ばれた黒猫は扉を開けてほしそうに足をばたつかせていたが、あきらめておとなしくなった。 「きっとどこかで彼女が頑張ってくれているわよ」  そう、この世界はそれぞれ夜の時間が違う。今もどこかで朝を迎えた世界がある。そろそろニュクスを部屋へ連れて行かないと。  ニュクスを抱きかかえて、二階へ上る。私の大好きな大きな出窓があるこの部屋からは、海がよく見える。 「さあ、ニュクス。行ってらっしゃい」  手を離すと、ニュクスは「みゃあ」と鳴いてテーブルの上に乗った。ビロードの布が敷かれたバスケットに入ると、少しうらめしそうにこちらを見てもう一度「みゃあ」と鳴いた。 「夜が来るわね」  漆黒の布の上にはビー玉ほどの大きさの、アレキサンドライトでできた球体が転がっている。それはニュクスの瞳と同じ色をしていた。
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