玻璃

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玻璃

 こうやって翠と一緒に帰るのも久しぶりだった。あんなことがあってから、なんとなく避けるようにしてしまっていたことに、申し訳なさをおもう反面、少しほっとしていた部分もあった。それでも今、翠と過ごす時間は相変わらず穏やかで、飾らないそのままの自分でいられることが不思議でもあった。 「2年生になってから、瑠璃は…変わったよね」 「そりゃあね、私だって少しは大人になりますよ」  私たちは少しずつ大人になっていく。あんなにかわいらしかった翠が、私よりも背が高くなって、声は低くなっている。そんなこと、特に気にしたこともなかった。 近くにいるほど気づかない。私にとって、翠はあまりに近すぎた。  でも、翠はそうじゃなかった。今でも、それを考えると顔が熱くなる。どうやって接したらいいのか、幼い私にはわからない。私たちが、お互いの気持ちを知ってしまうその日が来てしまったら、何かが変わってしまうのだろうか  壊れないでほしいと願うのは、私のわがままなのでしょうか。 「…元気ないの?はい、これあげるよ。ねえ、笑って?」  翠の手の平には、私が小さいころから大好きな飴が置かれていた。
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