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進みの遅い時計の針が、やっと1秒を600回刻んだ。そろそろあの2人も帰っただろうと腰を上げようと階段に手をついたその時、何かに触れたことに気がついた。
どうやら、手に触れたそれはストラップのように見える。拾い上げて近くで見てみると、結構年季の入ったものなのだろうか、ストラップの紐はボロボロになって千切れてしまっている。その紐の先には小さない黒色のガラス玉がついていた。ガラスの表面には無数の小さな傷がついているのが見え、もともとがどんな模様だったのかもわからなくなっているほどの状態だった。
こんなになるまでつけていたものなのかな。私は運動部の間で流行っているミサンガを思い出す。編み込まれた紐が切れた時に願いが叶うといって、大会を控えた大好きな恋人に、もしくは後輩から先輩に、などと想いをこめたあれだ。クラスでもつけている子を数名見かけるが、四六時中つけっぱなしでいてもなかなか切れるものではないそうだ。
このストラップの紐も編み込まれており、細いミサンガと同じくらいはある。こうなるまでの長い間、誰かが大切に持っていたものなのかもしれない。持ち主に戻すためには職員室の前にある落とし物箱に入れておくのが一番だろう。私はそれをひとまずポケットに入れて部室へ向かった。
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