玻璃

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 明かりがついた鍵のかかっていない部室に違和感を持ちつつも、耳を近づけ2人がいないことを確認してドアを開けると、さっきまでとは違った人物が目に入る。藍斗くんがパソコンを片付けているところだった。 「な、なぜに藍斗くんが残っているの。私より先に帰らなかったっけ?」 「ああ、まだ少し進めたかったんですけど、みんなに気を遣わせると悪いと思って帰ったふりして戻ってきました。なかなか出て行ってくれない人たちがいて結局5分くらいしか出来ませんでしたけど」  どうやら似たようなことをしていたらしい。窓際に置き忘れていた携帯電話を見つけてポケットに入れると、かちゃりと小さな音を立てた。思い出して取り出すと、蛍光灯の明かりでさっきよりも色がはっきりと見える。思ったよりも透き通った色をしていることに驚いた。黒だと思っていたそれは、とても濃くて深い、青い色をしていたのだ。 「すごく綺麗…」  外側だけでなく内側にも無数についた傷は、たくさんの光を受けてその球体のなかで反射し、小さな宇宙を作り出している。ふと漏れてしまった声で、藍斗くんも私の手の先のものに目をやる。 「良かった。もう見つからないと思っていました」  とても優しい声でそう言うと、そっとガラス玉を手に包んで藍斗くんが笑った。少し考えてみれば、あの場所に行く人なんてほぼいないことはわかるはずなのに、落とし主が藍斗くんだったことに気づかなかった私は驚いてしまった。
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