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「私にとって、夕やけは…」
それでも、ほんの1mmほど、わずかにだけでもいいから、いつかに感じたはずの愛しさを覚えていてほしいと願いたくなる。それに、夕やけの先の闇には、控えめにはあるけれどそっと誰かを照らすものもそこにはあると気づいてほしいから。
顔を上げてみないと気がつかないような、見つかりにくいほどささやかな光はきっとあるはずなんだ。
藍斗くんの質問にうまく答えることができずに黙ってしまったまま数分、答えをせかす様子すら微塵も感じさせない彼は、ずっとずっとその先を見たままだ。
「………見逃したくないほど愛しい希望なんだと思う」
自分でも何を言っているのかいまいちわからないけれど、これが精いっぱい出した私の答えだ。あっという間に過ぎてしまう夕やけの時間は、その先の夜は決して怖いものではないと教えてくれるような、あたたかくて優しい光を見せてくれていると思うんだ。
「きっとね、悲しいだけの時間だとは思いたくないの」
めぐらせた思いは大きすぎて、言葉にすることが難しい。それでも、今、私はぎこちなくてもわかりにくいものでもいいから、あなたに伝えたいと思ったのだ。
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