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「あははっ、少しかっこつけちゃいましたかね?瑠璃先輩の考えを聞いたらなんだか俺まで素直になっちゃいましたよ」
振り返ったときには、もうすでにいつもの藍斗くんに戻っていた。おなじみの軽口をたたきながら、空に向かって大きく伸びをしている。
「だって、藍斗くんが聞いてきたからでしょー!せっかく一生懸命に考えて伝えたのに」
反抗をしているのは、怒ったからではない。私の考えを肯定して、認めてくれたことに対する照れ隠しだ。きっと、そうなんだ。
いつもと同じ、にぎやかな空気に変わった夜道は、さっきよりも明るく見えていた。
「あー、今頃ニュクスは夜を運びに駆け回っているのかなあ」
ふと思い立って、夜を、ニュクスのことを考えてみる。
「ここら辺はもう夜が来たから、きっと次の場所に向かって頑張っているんじゃないですかね。あんな小さい黒猫がって思うと今でもたまに信じられなくなりますけど」
多くの眠る生き物たちを起こすことのないように静まっていく世界。そこでしか見えないもの、聞こえない音も存在すると気づいたのはいつのことだったか。
「私、夜も好きだな」
そっと口にした言葉を隣の彼は聞き逃さない。
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