軌道

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「お手伝いって、何をすればいいんですか?」  落ち着くことのできた私がそう尋ねると、いつものように優しく微笑んだシュガーさんは何も言わずに冷蔵庫の扉を開けに行った。そして、数分も経たずに戻ってくると、その両手に持っていたのは深さのある大きめのステンレスでできたトレーだった。  椅子から降りてカウンターの上に置かれたものをのぞき込んでみる。見えたのは、規則正しく並んだ四角いものたち。 「これは氷ですか?業務用のブロックアイスにしては小さめだけど」  同じようにのぞき込んでいた藍斗くんが尋ねると、その通りだと言うようにシュガーさんはうなずいて答える。5センチよりは少し大きい氷でできた立方体がいくつか入っているようだ。 「これをね、まあるく削るお手伝いをお願いしたいのよ。難しいし、危ないところもあるわ。それでもやってもらえると、とっても助かるのだけど…」    答えはいつだって決まっている。了承した私たちは、シュガーさんに習って作業を進める。清潔な布で氷をつかむと、あっという間にその冷気が伝わってくる。アイスピックを手に持ち、立方体の角を削ってゆく。鋭さにおびえておそるおそるやっていると、あたたかい空気はすぐに氷を溶かしてしまう。ぎりぎりのところを攻めていかなければならないようだ。いびつさが残る球体は、不器用ながらもなんとかひとつ完成した。藍斗くんは器用にこなしてすでに2つ目を削り始めている。最初は難しかったけれど、慣れてくると完成度の高いものを作ってみたくなり気合を入れて氷を手に取った。誰も言葉を発せずに、氷の削れる音だけが響き渡った。
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