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トレーの上にはごろごろと、さっきまでとは違った姿が転がっている。3人で進めたことで意外と早く作業を終えることができた。もう一度、冷凍庫で少しの時間冷やすと綺麗に出来上がるとのことで、それを待つ間は今日も相変わらず話を楽しむ。
「雨が好きってだけで、ニュクスがこんな素敵な場所につれてきてくれたなんて、今でもたまに信じられなくなりますよ」
なんとかこの店を見つけ出して、こんなに楽しい時間を過ごせている嬉しさを噛みしめてみる。まさか本当に『夕暮れ時の魔女』の店だった場所で、不思議な力を与えられた魔法のような体験をしたあのひととき。思い返しても夢のようだ。
「そうね、雨が好きってだけじゃないのかもしれないわね」
ふわっと笑って私たちを見たシュガーさんは続ける。
「誰かの幸せを心から喜んで、悲しみにはそっと寄り添う。そういうことができる人って、意外と少ないものなのよ。そういうところが、ニュクスは好きだったんじゃないかしら」
言葉がゆっくりと降りそそぐ。あたたかい陽だまりのような響きが、身体中に染み渡るようなそんな感覚。思わず藍斗くんの方を見ると、紅潮した頬をしてどうしたらいいかわからないというような表情をしていた。ふわふわとくすぐったい。
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