地図

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 めずらしく明るいうちに学校を後にする。一人になり坂を下ってゆくと、大きな木が見えてきた。カロン、寄ってみようかな、開いているといいなと思いながら道を進む。看板はopenになっていた。店内にベルが響き渡る。 「シュガーさん、こんにちは」 「あら、久しぶりね」  店内には常連のおじいさんが1人、窓際の席でうとうとしながら壁にもたれかかっていた。シュガーさんはいつも通り微笑みながら、カウンターへ座るよう手招きをしている。 「明後日、体験入部をやってみることになったんです」  腰を下ろし、ここ数日のことを話す。シュガーさんは、ソーダ水を出してくれた。私が高校生だということもあり、「毎回珈琲を頼むには、まだ早すぎる年齢よ」と言って格安で提供してくれる裏メニュー。ほのかに感じられる爽やかな香りは、季節ごとの果物を使って風味付けをしているらしい。その気遣いによって、この年齢にしてはなかなかの頻度で通うことができているのだ。ちなみに、大好きなカフェラテのスペシャルは、自分へのご褒美として2週間に1度までと決めている。そんな客にも関わらず、また来てくれるのを楽しみにしていると言ってくれるシュガーさんは、女神様に見えてくる。 「とても素敵なルートね。私も参加したいくらいよ」  さすがに高校生にはまぎれられないわねえ、なんて呟きながらシュガーさんがほめてくれた。ソーダ水の氷がカランと音を立てる。 「駅の近くに、アンティークの雑貨屋さんがあるの。お店には異国のランプや置物がたくさん飾られていて、幻想的でとても美しいわ。星見通りから少し入ったところにあるんだけど」 「あ、駅からは星見通りを歩いて海へ行く予定なんです。見つけたいなあ」 「強く願えば、叶うこともあるんじゃないかしら」 続けて、秘密を教えるときのように小声で「売り物ではない素敵なランプもたくさんあるらしいわ」と話してくれたのだった。
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