カロン

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 それからしばらくはこの話が頭から離れず、部活が無い日は喫茶店探しをして帰った。友達には通学路の新規開拓だと言って、バスや電車も使っていろいろな場所を一人で歩いた。いくつもの喫茶店を訪れたが、おおよそ予想通り噂のイメージと合致しないものがほとんどだった。    そんな日々が数か月続いた秋の日。雨だからまっすぐ家に帰ろうと思って傘をさして坂を下っていた。お気に入りの水玉模様の傘。雨はそんなに嫌いじゃない。そこまで強くない雨の音が聞こえるくらい静まった世界や、湿った空気の雨のにおいはいつもの風景を少しだけ変えてくれる。側溝に流れてゆく雨水を目で追いながらカーブに沿って坂を下ってゆく。  カーブが終わるあと少しのところで見慣れない塊が視界に入ってきた。小さな黒猫が木の陰で雨宿りをしている。逃げられちゃうかなと思いながらもそっと近づいてみたところ、そのままこちらを見て「みゃあ」と鳴いた。首には赤いリボンが巻いてあって、りんごの形をした金色のプレートが下げられていた。しばらくすると雨は止んだ。  黒猫はまた「みゃあ」と鳴いて、木の陰に隠れていた細い道に向かって歩いていった。こんなところに道があったのかと思いつつ見ていると、立ち止まってこっちを振り返っている。なんだか呼ばれている気がして少しついて行ってみることにした。しばらく進むと道の横にはプランターに入った花が綺麗に並べられており、小さな洋館が現れた。
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