カロン

5/5
前へ
/168ページ
次へ
 この辺りではあまり見かけない感じの建物だなあ、なんて思いながら見上げてみる。そういえばあの黒猫はどうしたのかと思い、見渡してみるが姿は見えなかった。風がびゅうと吹いて雨に濡れた花を揺らしている。 「あら、虹が出ているわ」 そんな声が聞こえてきて、驚いて声がする方を見てみると洋館の二階の出窓から女の人が遠くを見ていた。視線の先に、きれいな虹が海と街をつなぐように出ていて、思わず「きれい」と呟いてしまった。 「あなたが虹を連れてきてくれたのかしら?」  これがシュガーさんとの、喫茶店『カロン』との出会いだった。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

216人が本棚に入れています
本棚に追加