砂浜

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 母の声が一階から聞こえた。ごはんの準備ができたから早く来てほしいらしい。階段を降りて席に着く。今日のメインディッシュは春キャベツを使ったロールキャベツ。いただきます、と口に運んでいると妹が話しかけてくる。 「お姉ちゃん、写真部の勧誘はどんな感じ?」 「あー、明後日から勧誘開始なの。新入生テストが終わるまでは勧誘禁止なんだって。何人かはすでに廊下に貼ったポスターを見て質問に来てくれたけどね。部登録が再来週だからそれまで頑張らないと」 「そうなんだ、私も早く高校生になりたいなあ。なんだか楽しそうだもん」  部登録、再来週。何気ない会話で思い出して考えてしまう。ほとんどの先輩たちは6月末の作品展で活動終了、秋の文化祭で完全に引退になる。そうすると確実に夏休みからは私たち2年生が主体となるのだが、いかんせん人数が少ない。4人しかいない私の代で後輩が入らないことは近い未来の廃部を意味する。それだけは避けなければならない。なんだかどこにでもよくある話だけども。 「何かいい方法ないかなあ」 「楽しそうな雰囲気出すのが一番じゃないのか。バーベキューとか合宿とか企画して。若い人たちの間でSNS映え流行っているんでしょ」  ビールを飲みながら父が言う。会社の若い人にいろいろ教えてもらってSNSを始めた父は、食べ物の写真を掲載することにはまっているようで撮り方をよく聞いてくる。 「うーん、写真部は別にSNS映えを狙っているわけではないんだよなあ」  でも、イベントを開催するのはいいかもしれないし明日部員に相談してみよう。食後のアイスをかけたじゃんけんをしながらぼんやりと考えていた。
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