砂浜

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 いつも通り、なかなかにつらい坂を上ってゆく。パン屋の赤い屋根が近づいてくると、手を振る姿が見えてくる。 「瑠璃(るり)―!おっはよー!」 「おはよ、橙子(とうこ)はいつも朝から元気だね」  待ち合わせているわけではないのだが、ここで合流することが多い橙子は数少ない写真部の同輩だ。明るくて楽しいことが好きな彼女は部内のムードメーカー。先輩たちに声をかけられて意気投合してそのまま入部したという勢いのある子だ。 「勧誘なんだけどさ、何かイベント作ったら興味持って入ってくれる子増えないかな」 「えー、楽しそうじゃん!私絶対参加!」 「参加だけじゃなくて企画から私たちがやるんだよ」  そんなことを言って笑っているうちに学校に着く。じゃあまた放課後ね、と言ってそれぞれ教室へ入っていく。席について外を眺めて、桜の花びらもあと数枚で終わってしまう様子に少し寂しさを覚えた。
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