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2020年4月
(やっと戻って来られた……)
一ノ瀬北高校。内山は、桜の舞い散る母校の門をくぐった。
見慣れた制服。男子だけのざわめき。登校する朝はいつも左側が眩しかったことも思い出した。
(懐かしい……)
あのころと、何も変わっていないようだった。
まばらな生徒たちの、好奇心を含む視線を感じながら、校門からまっすぐに続くレンガ敷きのアプローチを進む。
もう40分もすれば、ここは始業ギリギリに登校する生徒たちでごった返すだろう。
トンネルのようにくり抜かれた校舎の下をくぐり抜けると、広いグラウンドに出て一気に視界が広がる。
始業式の日だというのに、グラウンドの左側のトラックでは陸上部が、右側では野球部が朝練をしていた。
内山が懐かしさに小さな違和感を覚えたのは、視界の三分の一が薄桃色だからだろう。グラウンドをぐるりと囲む三辺に、ソメイヨシノが行儀よく並んで花の盛りを誇っていた。
(あのころから桜なんかあったかな?)
考えても答えは出ない。普通の男子高校生は、花になど興味をもって生活していないからだ。
(もしかしたら、あの事件の後で、学校の印象改善のために植えられたんだろうか……)
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