2020年4月

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 菅は内山の高校時代の同級生で、3年間ともに白球を追いかけた仲だ。新卒で母校に着任し今年で3年目になる日本史の教師で、今は野球部の顧問を任されていると、先日久しぶりに連絡を取ったときに聞いていた。  内山が野球部のほうに歩み寄ると、菅も小走りに三塁側までやってきた。 「おーっす、早いな! 職員会議までに来ればいいって言われただろ?」  菅は高校時代と変わらぬ、人好きのする笑顔で見上げてきた。 「ああ。まあ、でも、初日だし念のため早く出てみたんだ」 「真面目になったもんだなぁ、お前」 「そうでもないよ」 「それにしても、お前が俺を追っかけてうちの学校に赴任してくるとはなぁ」 「別に追いかけてねぇし」 「はは、まぁどっちでもいいけど。この学校じゃあ俺は先輩教師だからな。敬えよな!」  わざとらしく腰に手を当てて胸をそらせたが、小柄な菅に威厳は感じられない。日焼けした肌にそばかす、当時は坊主だった頭を今は茶色く染めた短髪が覆っているが、菅の印象は変わっていなかった。  彼と話していると、思わず口調が高校時代のそれに戻ってしまう。     
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