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「お――い! 野球部集合――!」
菅はよく通る声を張って部員を呼んでから、内山に笑いかけた。
「紹介するな」
砂ぼこりを立てて野球部員が集まってくる。2学年だけで30人弱だろうか。みんなよく日焼けし、春なのでそれほど汗をかいている様子はないが、集まると立ちのぼる特有の男子臭が懐かしかった。
「今日から赴任する、内山先生だ。教科は英語……だったよな? 内山先生は俺の同窓で、ここの卒業生。野球部のピッチャーでキャプテンだった男だ」
おお――っ! と低い歓声が上がる。そこここで「デカいもんなぁ」「野球続けてんのかな?」などと隣り合わせた者同士でささやく声が聞こえた。
「顧問は今年も俺が続投するが、内山先生にはぜひコーチとして練習にもつきあってもらうよう、鋭意交渉中だ。校内でもあいさつ忘れんなよ。俺らは職員会議があるからもう行くけど、お前らももう片付けして早めにあがれ。じゃ、お疲れさん!」
「あーーっした!」
野太いあいさつに見送られ、内山と菅は校舎に向かって歩き出した。菅は途中で振り向くと、
「一年生には、入部するまでは、優しくするんだぞ――!」
と部員たちに冗談を飛ばした。部員たちはどっとうけて、それぞれが楽しそうに雑談しながら片付けに散っていった。
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