喫煙者の受難、止みそうもなし。

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今から約1年ほど前の話である。世界中のパイプ煙草の愛好家の間で、激震が走った。「ダンヒル」のブランドを冠したパイプ煙草の製造を、打ち切るというニュースだった。ここは少し、簡単な説明をしなければならないだろう。御存じのように「ダンヒル」は、英国を代表する高級ファッションブランドである。うろ覚えで恐縮だが、確か男子サッカーの日本代表のスーツは、ダンヒルのスーツではなかったか。銀座のダンヒルのショップのショーウインドーに、粋にスーツを着こなしている日本代表の有志の写真が、大きく飾られていたのを、私もハッキリと通りがかりに見た。 ダンヒルは今でこそ、高級ブランドとして世界に冠たる存在になっているが、創業は馬具などを取り扱う会社として、出発した。フランスのエルメスもやはり、馬具の工場から今に至っている。馬具であったりパイプ煙草であったり、我々庶民の生活に密着した物を、当初は作っていた事になる。 しかし今現在、ダンヒルの名前を冠した煙草は、ダンヒル本社が作っている物ではない。ダンヒルのショップは日本中、否、世界中にあるけれど、スーツやコート・ネクタイなどは商品として売っていても、煙草は売っていない。BAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)という、英国に本社を持つ世界的な煙草会社が、ダンヒルの名を冠したパイプ煙草を今迄、取り扱って来たのである。BATが取り扱って来た煙草の銘柄は、数多くある。 世界中の愛好家は「BATの声明」に驚愕し、どうしようかと頭を抱え始めた。我々の選択肢は限られている。第一はこれを契機に禁煙するか、第二は「ダンヒル」に代わるパイプ煙草の銘柄を新たに探すか。これしかない。しかし「ダンヒル」の数々の煙草は、世界中の愛煙家から、熱烈な支持を集めて来たのも事実である。「ダンヒルに代わる銘柄」が簡単に見つかるとも思わない。 世界的な「禁煙の波」も確かにあるだろう。しかし個人的には「加熱式煙草へのシフト」を、邪推してしまう。BATはgloという新しい形の煙草で、勝負に挑もうとしている、確かにパイプ煙草は、一定の支持者が居れば、売上に困る事も無いだろう。しかし「新しい時代の煙草」を牽引していくという意味の方が大きいのかもしれない。増してやダンヒル本社は、本業ではなく名義貸しのような物で、困る事もない。 加えて国際政治も関わる。上質なラタキア葉はシリアで採れるそうだ。
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