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信念を貫く為、孤独の道を選んだ満智子。
一途なその姿勢は、薙の良く知る『或る人物』と重なる。
全てを投げ打っても、大切な者を護ろうとする清廉な強さ──その鋼の意志。
「貴女の様な人を知っています。」
金の娘は、地検の女帝を真っ直ぐに見据えて言った。
「ボクの最も身近に在って、決して曲がらぬ『信』を持つ人…。我が身を棄て切り、命に代えても一念を貫く強い人──だけど。その選択は、全てに於いて『正しい』と言えるでしょうか?」
「どういう意味??」
「貴女自身が幸せにならなければ、その英断も、ただの自己犠牲で終わってしまいます。貴女を想う『誰か』を、徒に悲しませるだけです。」
「…私に、どうしろと仰有るの?」
「ご自身の幸せを諦めないで下さい。信念の為なら死んでも良いなんて、思わないで…。誰かを護る為に身を退く事は、潔い生き方かも知れない。だけど、幸せになる事を諦めてしまったら、そこで全てが終わってしまう。命を未来に繋げてこその信念だと、ボクは思います。」
薙の訴えはまるで、此処には居ない別の『誰か』に向けられている様であった。
縋がる様な、切ない眼差しに胸を打たれて…満智子は、思わず息を飲む。
「当主さま、貴女…」
「約束して下さい。絶対に、自ら命を投げ出す様な真似はしないと。どんなに不様でも、最後には必ず『生き残る』方の道を選ぶと。そう約束して頂けないなら…ボクは、貴女の力になれない。」
切迫した様子で懇願する薙に、満智子は、気圧された様にコクコクと頷いた。
「…解ったわ、約束する。何があっても、決して自暴自棄になったりしない。軽率な行動も控えるわ。」
満智子が請け合うと…薙は漸く安堵した様に、溜め息を吐いた。
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