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語気を荒げて、悠真は続ける。
「体の傷は、いつか癒える。だが魂に受けた傷は、決して癒える事がない。アンタは、俺達の魂魄に、生涯消えない傷を残した。この裏切りは万死に値する!」
「さて…何の事だか見当も付かないが?」
尊大に顎を聳やかす紅青。
その一挙手一投足が、悠真を益々苛立たせた。
怒りに身を震わせる嘗ての愛弟子に──紅青は、容赦無く畳み掛ける。
「そもそも、先に裏切ったのは君達だよ?私の留守を良い事に、法嗣が密通に及ぶとは…恩を仇で返したつもりかい??」
「……っ!!」
言い返せない悠真を見て、紅青はクツクツと肩を震わせる。それから、下卑た笑みを湛えて訊ねた。
「──菖は、良い女だったろう?」
「な…っ??」
「ふふ…。白状しよう、悠真。彼女は元々、君の妻に据える為に、一門へ迎え入れた娘だ。遅かれ早かれ、君等は夫婦になる事が決まっていたのだよ。」
「何、だと??」
「だが、プライドの高い君達は、互いの力を誇示するばかりで、ちっとも馴染もうとしなかった。そこで、この私自らが、お膳立てしてやったという訳だ。主人の目を盗んで不義を働くスリルは、君達を燃え立たせるのに、充分な効果があったろう。情事は愉しめたかね、陰?」
「…全てはシナリオ通りって訳か?」
「そうだよ。鬼童の製造を許可したのも、君達を競わせて、互いを意識させる為だ。出雲の結界を破るには、一門に代々伝わる《陰陽合一の法》を修する必要があった。君等の様な優秀な法嗣がいて、初めて成功する秘術だよ。陰陽は対立すべきではない、寧ろ一つになるべきなのだ。…君等も、同じ結論に辿り着いたのだろう?」
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