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餓えた影達が、壁一杯に体を延ばして、餌を強請る。子供の様なその反応に、悠真は呵呵大笑した。
「さぁ、死霊ども!再び、蛇鬼の肉体に宿れ。渇きと餓えを満たすには、実体が必要だ。蛇鬼が、お前等の『器』になる。行こう──愉しい宴の始まりだ!」
オォォ…オォォ…
歓喜の叫びを上げると、影達は、身を丸めて眠る蛇鬼の口から耳から、または鼻孔から、一斉に体内へ侵入した──すると。
熟睡していた鬼童の少年が、刹那、ビクリと身を震わせる。 屍鬼と化した死霊達が、蛇鬼の魂魄に取り憑き、結合したのである。
悠真は、ニタリと酷薄な笑みを刻んで言った。
「…死霊の動きが活性化した。蛇鬼は、まだまだ成長する。益々、強く凶悪になる。」
愉悦に充ちた笑みを履いて…悠真は、眠る蛇鬼の髪をすく。
そして──
「待っていろ、菖…今、迎えに行く。」
生き別れた妻に呼び掛けるや、死霊遣いの少年は、不意に虚空を見上げた。
漲る殺気。
その隻眼は暗い欲望を宿して、ぎらぎらと妖しく輝いていた。
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