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「本当にごめんなさい…。」
満智子は、殊勝に頭を下げた。
「私は、貴方を見た目だけで判断してしまいました。物事を先入観で捉えるなんて、検察官として有るまじき失態です。」
年少者であるという理由で、薙を軽んじていた事は確かだ。相手は仮にも、宮内庁式部職に就く六星一座の代表である。
だが当の本人は、特に気を悪くした風も無く、朗らかに笑ってこう言った。
「貴女は真面目な方ですね。そして、とても辛い過去をお持ちだ…。『或る目的』を成し遂げる為に、長い間、胸に秘めてきた決意がある。」
「え?」
「此処に来られた理由も、『それ』ですね?だから、遠路遥々こんな『田舎』まで足を運んで下さった。」
「ぅ…。」
「どうかそう畏まらないで。『平安貴族』の様な『宮殿』に住んでいても、ボクは『お姫さま』じゃありません。楽になさって下さい、深水満智子さん。」
「────。」
満智子は、暫し、返す言葉も無かった。
ズバリと目的を見抜かれた上、誰にとも無く呟いた独り言まで、全て言い当てられてしまったのである。
薙の黒曜石の瞳は、何もかも見透かしている様だ。背筋に冷たい汗が伝うのを感じる。
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