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これが、金剛首座の力──。
この小さな身体から発せられる、包み込む様な空気は何なのだろう?鷹揚と脇息に凭れるその姿には、老成した余裕さえ感じられる。
一座の頂点に立ち、重責を担う身でありながら、気負うでも無く驕るでも無く…肩から、程好く力が抜けている。
「首座さま…貴方は、全て御存知なのね?私が今、どういう状況下にあるのか…」
「いえ、まさか。ボクは神ではありません。貴女の全てを理解している訳でもない。」
「でも、神子さまなんでしょう?後村から聞いています。貴方は、数百年に一度生まれて来ると言う、伝説の──」
「深水さん。」
満智子の言葉を遮って、薙は静かに語り掛けた。
「ボクは、少しばかり特異な力を持った人間です。だけど、決して『万能』ではない…。ご相談は伺いますが、ご期待にお応え出来るかどうかも断言出来ない。貴女の『願い』を叶えるのは、ボクではありません。あくまでも、貴女自身です。それでも宜しければ、どうぞ全てをお話し下さい。」
言い終わるや否や、薙の瞳が強い金色を帯びる。
満智子は、ゴクリと喉を鳴らした。
水晶の様に透き通る眼底が、角度を変える度キラリと輝く。幻想的なその様子は、宛ら、水底を游ぐ魚の銀鱗を想わせた。
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