[二段目]Prestissimo(プレスティッシモ)非常に急速に。

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 卑劣な計画の一部始終を知って…悠真は、キツく唇を噛んだ。今更ながら、紅青の鬼畜ぶりを認識する。  まるで、実験動物の交配の様じゃないか。 紅青は、最初から陰陽の法嗣を結び付ける為だけに、動いていたのだ。 菖に対する欲情すら、紅青にコントロールされていたのかと思うと…怒りと屈辱で、腸わたが煮え繰り返る。 「菖は、この事を…?」 「あぁ、知っていたかもしれないね。彼女は賢い。男女の情愛に溺れる程、脆くもない。悠真、君だけが何も知らずにいたのだとしたら…それでも君は、菖を愛せるかい?」 「っ──!!」  火に油を注ぐ様な紅青の言葉に、とうとう悠真は激昂した。妖刀・鬼讐(きしゅう)を構え直すと、嘗ての主人を真正面から見据えて言い放つ。 「これ以上アンタと話す事は無い。勝負だ、紅青。アンタを倒し、俺は名実共に、鈴掛の頭領になる!」 「…良かろう。受けて立つ。元よりそれが、一門の(なら)いだ。」  紅青は、鞘から剣を抜き放った。 妖しく澄んだ白刃が、頼り無い月明かりを跳ね返す。  二振りの刀が、ついに鋒を交えた。 鬼をも伏せる妖刀・鬼讐。 それを迎え伐つのは、天魔に依って穢された《金の星》の宝剣・凰華であった──。
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