ロイヤルオメガ

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アキラは不満を顔に出し、 「リクはアシュリだけでも幸せになればって思わないのかよ? こいつはこんなとこに置いとくの勿体ないほどの男だって。 良いのは顔や頭や視力だけじゃない。 身体つきもしなやかでシミ一つないだろ? 明らかに俺たちとは違うって」 アキラに指摘されたリクは、自分では気付かない嫉妬心がわずかにもあって、それがつい顔や口に出ていたのかと驚き、慌てて話を変えた。 「そう言えばお前に頼まれてた緊急避妊薬(アフターピル)持ってきたぞ」 シャツの胸ポケットから錠剤の並んだアルミシートをつまんで差し出すと、 「お、サンキュ」 アキラの方も腰を浮かし尻ポケットから札を出して渡した。 「金、濡れてる」 文句を言いいながら金を受け取るリクに、 「しょうがないだろ、客取ったばかりなんだから。 今日の奴、俺をシャワーに引っ張り込みながら金渡しやがってさ、その後もがっつく がっつく、、、。 危うくプロテクター外されて首咬まれるとこだった。 けど額は上乗せしてくれた」 アキラは気にもせずに喉の奥で笑った。 その首には咬まれないための分厚い皮製のベルトが巻かれている。 「アルファに首の後ろ噛まれたら番になっちゃうって本当?」 アキラのベルトをハクが心配そうに見つめる。 「本当だ。それにな、一度番になったらホルモンてのが変わって、そいつ以外とはヤれなくなるんだぞ。それでもって捨てられてみろ、発情期ん時には死ぬほど苦し、、、」 「アキラ」 あまり脅すなと阿朱里が声をかけ、 「ハクも発情が近くなったらアシュリみたいに布くらい巻いとけよ」 アキラはジェスチャーで首に布を巻き付ける仕草をして見せ、肩をすくめた。 「でも、、、アキラはいいな。 闇宿で稼げる年齢で。 携帯も持たせてもらえるし、食べ物にも困らない。 稼ぎながらいろんなアルファ相手にできるから、そのうち運命の(つがい)に出会えるかも知れないね、なんだっけ、メイト?」 幼いハクが本気で言ってると見ると、 「魂の番(メイト)に出会えるかもだって?  そんな奇跡めったにあるもんじゃねーぞ。 ほとんどのオメガは自分のメイトを知らないまま死んでくって聞くし、生きてるうちに温厚なアルファにでも拾ってもらえればそれでラッキー、、、。 ま、温厚なアルファってのもあんまりいないだろうけど」 アキラは叶いそうもないハクの夢を早めに砕いて続けた。 「ハクはまだ一人じゃ食ってけない孤児だからアシュリが面倒見てやってるけどな、いずれ単体で動かないと狩られるリスクが上がるんだ。 管理局の麻酔銃で撃たれたら半分は死ぬって噂もある。 俺が安全な寝ぐらを探すの手伝ってやるから、早めにアシュリから離れてやれ。 それといいか? 闇宿に出入りするとしても あくまで発情期の間だけ。自分の身を守る為だけってこと覚えとくんだぞ」 「、、、うん」 寝ぐらを定めないアキラの収入源は、発情期(ヒート)中のオメガを好むアルファ専用の風俗だった。 そこは野良のオメガにとっても有難い場所で、オメガがヒートを起こした際、フェロモンをばらまいたが為に襲われるのを防ぐ避難所としての機能を持っていた。 見張り付きの管理された個室で客のアルファに慰めてもらい、同時に金も稼げるというメリットもある。 が、味をしめたアキラはハクに注意しておきながら、自分はヒートであろうと無かろうと年中居座っていた。 「そろそろフェロモンが強くなる。 薬も手にいれたし、このまま缶詰めになるから一週間後にまた会おうぜ。 そん時までに旨い酒仕入れといてくれよ、アシュリ」 リクがドラッグストアから盗んでくるアフターピルを手に入れたアキラは、首に嵌めた幅のある皮製の輪を撫でながら立ち上がった。
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