ロイヤルオメガ

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阿朱里(アシュリ)が地下を抜け出たのと同じ日の早朝、 都心の内環状線を73式軍用トラック数台が、その後ろには政府の公用車が2台、列を成して走り抜けた。 公用車の後部座席には、 国立稀少種擁護管理局の首長である 澁澤(しぶさわ) (れい)が、 助手席には同じく管理局付の事務次官、鷹堂(たかどう) (じん)が座し、 澁澤はひっきりなしに通知が入るスマホを、鷹堂の方は手元のタブレットで国立歌劇場、通称オペラ座の地下構造図を確認している。 二人とも年齢は同じであるが、立場としては澁澤の方が上であり、またキャリアも長かった。 そしてこの澁澤(しぶさわ) (れい)こそが、近年絶滅を危惧され始めたオメガ種の中から『神格化』に相応しい特徴ある稀少者を見つけ出し、上位アルファに対峙する 『ロイヤルオメガ』を造り出したのである。 つまり、国立稀少種擁護管理局首長とは、 全オメガ種を平等へと導く救世主であり、『番の儀式』における陰の仕掛人であった。
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