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痩せた小さな身体が不自然な形でうつ伏せ、
ピシピシと音を立てていた。
───
痙攣しながら薄く開いた目を見れば、
誰が見ても助からないことは明白だった。
救命に駆け寄った職員がハクの身体を調べ、その後ゆっくり首を振ると、
阿朱里はその場で立つ力を失った。
男に抱えられて地上へ出、既に降りだしている雨に打たれてもそれを感じることはなく、
周囲のざわざわした動きと会話だけを遠くからの雷鳴と共に聞いていた。
「遺体搬出」
という声がした方へ頭を傾け、開く片目を泳がせると、
二人の職員によって四肢を捕まれ、運び出されるハクが見えた。
ゆらゆらと頭だけが揺れている
変わり果てたハク。
自分を抱く男の胸に顔を押し付け、阿朱里は目を閉じた。
別の職員が車で待機する澁澤に報告を入れる。
「保護予定の子供一名、
追跡中高圧電流に接触し感電、
生命兆候なく即死と判定。
残る一名は鷹堂次官が無事保護を完了しました」
この時の阿朱里には、こんな世の中と、組織と、誰かと闘う気力など微塵も残ってはいなかった。
これまでと同様、ただただ自分達が生まれ持った属性を呪うというのは変わらなかったが、
それですら、
幼いハクを助けてやれなかった今となっては、もうどうでもよかった。
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