Mate

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車は正門を潜り、管理局中央の脇にある屋内に併設された駐車場へと滑り込んだ。 先に降り立った澁澤(しぶさわ)に続き、鷹堂(たかどう)阿朱里(アシュリ)を抱え、駐車場から直結する検査室に向かう。 靴音が耳に障るほど静まり返った通路。 その響きを合図に扉が開き、管理局の専属医、前園(まえぞの)が姿を見せた。 前園は、鷹堂に抱えられた阿朱里の痩せこけた姿と右目を塞ぐものに顔をしかめ、 「これは、、、」 元の髪色が黒なのかグレーなのか、或いは茶色だったのかも わかりかねるほど白く(すす)け、所々固まっている(さま)に絶句した。 「薄汚い瀕死のオメガも一年後にはエリートアルファから引く手数多(あまた)な『神』となる。 (まこと)の神がいるならばお怒りになるかもな」 意外にもそんな阿朱里を厭わず、指先で顎を持ち上げた澁澤に鷹堂は、 「彼は先ほど自らを『アシュリ』と名乗りました。 麻酔を使わず保護しましたので、現在の意識低下は仲間の死によるショックと栄養状態による為だと思われます」 無意識に数歩下がって距離を取った。 「、、、、」 澁澤は視線を再び医師に戻す。 「先ずはこの目を何とかしろ。 体力の回復を待って早急にロイヤルオメガの認定検査を受けさせたい」 医師が診察台に寝かせるよう促しただけであるのに、鷹堂は手際よく阿朱里の身体から汚れた服を取り去った。 鎖骨、肋骨、骨盤に膝まで、垢を纏った骨と皮だけの身体が晒される。 萎縮した小さなペニスは、あるかないかの薄茶色の毛に白く浮き、力なくしなだれていた。
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