Mate

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4日目、 ─── 男は食事用とは違う金属製のトレーを持ってきて阿朱里の前に置いた。 食べ物かと思い側に寄って覗き込んだ阿朱里はそこに針の付いた器具があるのを見て 飛び上がり、再び顔に警戒の色を浮かばせて後ろの壁に張り付いた。 が、男は自分が着ているシャツの袖を捲り上げ、液体の入っている小さな筒状のガラスを口に咥えた。 「もうわかっているとは思うが」 カチャカチャと音をたてながら器具を組み立て、咥えていた筒のキャップを口で外し細長い器具の中央にセットすると、白い綿で皮膚を一撫でし、自らの腕に針を刺す。 「俺はアルファだ。 お前は、、、まだ発情前のオメガだな。 しばらく風呂にも入ってなかったんだろう、初日はいろんな意味で たまらなく良い匂いをさせてたぞ」 阿朱里をちらりと見て笑い、 ゆっくりと器具の先に付いた針をさらに押し込んだ。 「万が一にもお前を襲うことがないよう、 この3日ほどは お前が寝た後に強いダウナー、、、つまり性抑制剤を打っていたんだが、そろそろお前も俺の匂いに慣れて落ち着いてきたようだし、目の前で見せた方が信用されると思ってな」 筒の中の液体が空になると一気に針を引き抜いた。 「これで安心だ。 突然猛獣と化してお前を傷つけることはない」 手にしてた器具を金属製の箱に放り込むと足を使って脇に退かし、 「さて。今度はお前だな、アシュリ。 若く美しいオメガの匂いに反応しなくなったアルファを苦しめるのは、罪のない身体から発せられる不衛生な臭いだ」 袖を戻した男が指を立て、差し示した自分の足元へ視線を落とした。 どこもかしこも白い粉をふいてカラカラになっている。 まともに食事を取れなくなってから、給水管から漏れる水を溜めて身体を洗うこともしなくなっていた。 皮膚は茶色い粘土細工のようで、阿朱里は気にもしなかった自分の汚さに改めて驚き、腕の臭いを嗅ぎながら足の指先を引っ込め擦り合わせた。 男は立って部屋の続きにあるバスルームに行き、シャワーから湯を流し始めると阿朱里に向かって手招きをする。 恐る恐る近寄る阿朱里に、 「いい加減これも替えさせてくれ」 診察室で着せられた一枚着を引っ張り『脱げ』と揺らした。
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