Mate

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─── 『アシュリ』 画面上に現れたリクは眩しいほど白く清潔なシャツを着て、髪の毛も短く整えられていた。 「リク、、、」 『ごめんな、管理局にお前達のこと話したのは俺だよ。 、、、でも、今思えばもっと早く言えば良かったと思ってる。 自分が捕まったからってわけじゃなくて、お前とハクを助ける為に。 アシュリ、俺達は管理局のこと誤解してたんだよ。 これまで話に聞いてたことは、ほとんど間違ってる。 実際俺は今、オメガ専用のセンターにいるんだけど、ここは想像してたような所じゃなかった。 誰も危害を加えたりしない。みんな親切だ。 食べ物も飲み物もあるし、、、着替えも、ほら』 ぴったりと長さの合った袖口を上げて見せ、 そこで少し笑った。 『健康状態をチェックしたら俺の魂の番(メイト)がいるのかどうかも照会してくれるらしい。 それだってこっちが希望すればってことだ。 、、、たとえ今はメイトがいなくても、ここにいれば安全だし生活も困らない。 施設内に限られるけど自由もある。 だからハクのことも伝えたんだ。 もしハクがあんなことにならなければ、、、』 そこから先のリクは声を詰まらせ、頭を振って下を向いた。 が、しばらくして顔を上げた時は真剣そのものの表情で、 『管理局は俺たちの為に動いてくれている。 オメガの中から特別な能力のある奴を見つけて『生き神』みたいな存在にしてくれたのも管理局だ。 アシュリ、お前にはやっぱりロイヤルオメガの資格があるよ。 、、、アキラも言ってたろ? これまでに会ったどのオメガより綺麗な顔してるし、頭もいいって。 俺もそう思うよ。 だからロイヤルオメガになって俺たちに希望を繋いでくれ。 全てのオメガの未来を変えて欲しいんだ」 画面の向こうで、 あの勝ち気なリクが泣いていた。 「昨日、俺たちがシティホールで見たロイヤルオメガに会ったよ。 奴の顔は明るかった。 (つが)った奴に愛されてるようだしな。 奴らが連れて来たアルファ達も俺たちを 変な目で見なかった。 少し話したけど、皆信じられないくらいマトモなんだ。 ロイヤルオメガが代表になって国民を動かせば、いずれ全てのオメガが他の種から正しく扱われる日が来る、だからお前は、、、』 そこで話をするリクの映像は止められた。 「通報者の彼もお前も、、、闇宿にいたオメガ達も、皆誤った情報の被害者だった。 お前も俺もオメガである属性を恥じる必要はなく、アルファやベータは属性を理由に人を傷つける権利はない。 俺たち管理局はオメガの意識と生活を変えようとはしているが、オメガであることに同情したり、特性を変えようとしてるわけではない」 澁澤は阿朱里の表情に明らかな変化を見、 一気に詰めに入った。 「2ヶ月前、お前はシティホール近くのビルからロイヤルオメガを見ていただろう? 彼は今、番だけでなく政界にいる多くのアルファから当たり前のように敬意と慎みをもって受け入れられている。 『番の儀』は単なる国政のパフォーマンスだけではなく、素晴らしい能力と魅力を持つ者がオメガの中にもいることを広報しているんだ」
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