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矢継ぎ早にまくし立てた澁澤は
珍しく興奮していた。
「可能な限り早急に審査会の者どもを呼び、お前がロイヤルオメガであるという認定を受けたい。
一年後の上位アルファへの引き渡しに向け
準備を始める必要があるからな」
「首長」
鷹堂は澁澤が理を詰めてオメガの置かれている現状を伝えたまでは黙っていられた。
しかし瀕死の状態で保護されてからまだ数日しか経っていない阿朱里の身体は完全回復と言うには無理があり、
早々審査を受けさせるというのは阿朱里の心構えを含めても時期尚早で、たとえ自分が魂の番でなかったとしても今は止めるべきであると思った。
「数年おきに執行される『番の儀式』は二ヶ月前に終えたばかりで、国民の意識改革はすでに軌道に乗っています。
そう急がなくてもよろしいかと。
何よりアシュリの体力が戻るには最低でも後1ヶ月ほどは」
「それがそうもいかなくなった」
視線は阿朱里に据えたまま、澁澤はテーブルに片手を着いて身を乗り出し
わずかな笑みを浮かべた。
「司法省のトップにいるアルファが次期ロイヤルオメガの番候補に名を上げた」
「司法省のトップ、、、。
というと、あの白波瀬省長が?」
司法省の長とは、国家権力を制限する力を持つ法曹界の主であり、実質的な地位としては国の元首に並ぶほどの者であった。
アルファという事を除いても、白波瀬 正樹という人物が若くして彼の持つ人柄と頭脳で異例の大出世をしているのは、鷹堂も知るところである。
ということであれば、先ほど前園からそれを伝え聞いた澁澤の高揚ぶりもわかるというものだった。
「そうだ。長く打診していた甲斐があった。
奴は現在独身、もちろんメイトもおらず、今後女性アルファとの利益婚も考えていないとのこと。
法曹界きってのエリート、社交界に出入りし、オメガに対する良識やヒート時の心得もある。
調査書を見ても番の障害となる交遊関係は過去も現在も無い、ロイヤルオメガには最高の番だ」
澁澤は阿朱里に向かった。
「アシュリ、相手が相手だけに、この縁組みを我々が築き上げた政策の集大成としたい。
俺が何よりも待ち望んでいた権力者が動いた。
これまでのオメガの中でも特に麗しいお前がロイヤルオメガとなり、管理局とのパイプを以てそいつを動かせば、新たな法も創案でき、全てのオメガに真の自由と権利をもたらすだろう」
真の自由と権利。
それは阿朱里のみならず、全てのオメガの願いであった。
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